鉢洗いの前に見たもの。

白いゴジラがやって来た。
音もなく口から火も吐かず
家々を踏み潰すこともなく。
スローモーションで歩いていたし、
あまりにもおとなしかったから
道ゆく人々の誰もが気づかなかった。
でもあれは確かにゴジラだった。
ぼくは運よく気づけたから
写真を撮ってしばらく眺めていた。
もしかしたら丘の向こうに向かって
消化器から出る白い泡のような”火”を
迫力満点で放つんじゃないかって。
だけどいつまで経っても白いゴジラは
同じ場所からほとんど動いていなかった。
写真を撮る人たちのためにわざわざ
止まってあげているのだろうか。
まさか!たぶん何かを考えているのだ。
何を考えているのだろう。
どうすれば人間どもを怖がらせられるか。
いや、それよりどうすれば自分の存在を
人間どもに気づかせることができるか。
大丈夫、ぼくが気づいてあげているから。
だから何かやってみてくれないか、
そうテレパシーを送ってみたら
白いゴジラはもじもじしながら
ぼくに向かってボソっとこう言った。

「オシッコがしたいんだけど」
「溜まっているのかい?」
「たっぷりと」
「背の高い巨大なゴジラがオシッコをしたら
ダウンバーストっぽくなりそうだ」
「間違いなくそうなると思う」
「キミはキミの足元にいる人たちのことを
考えたかい?」
「・・・いや」
「そこでやったら相当恨まれるよ。
そこから回れ右して横浜港まで移動できる?」
「分からない。けどやってみるよ」
「ぼくはこれからお祭りの慰労会で
出かけてしまうからキミの移動を
見届けてあげられないけど幸運を祈るよ」

それからぼくはお店に行き
役員の皆さんと中華料理を突きながら
紹興酒を飲み楽しく酔っ払ったのだった。
お店を出てみんなでわいわい騒ぎながら
二次会のお店に移動している最中、
何気なく夜空を見上げたけど
その時はもう白いゴジラのことは
すっかり忘れてしまっていた(笑)。
一夜明けて頭がガンガンする中
スマホで撮った写真を眺めていたら
冒頭の画像が出てきて思い出したのだった。

※昨晩は鉢洗い(お祭りの慰労会)で
役員の皆さんと楽しい時間を過ごしました。
ちょっと飲み過ぎたみたい。
そしてちょっと気持ち悪いです。

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