風の季節。
まっ青な空の中を
のんびり泳ぐ雲の群れ
少しずつ形を変えながら
みんな同じ方向に向かって
同じスピードで流れていた
地上が突風に見舞われていても
雲の動きをしばらく観察していると
上空は案外穏やかなのかもしれない
風のことで思い出したけど
ぼくがまだ就学前の頃のこと
祖父が木の柱を立ててぼくのために
毎年この時期になると
鯉のぼりを揚げてくれていた
柱の真下から見上げると
風に煽られた鯉が元気に泳ぐたび
柱を括り付けた荒縄がギイギイと
悲鳴のような音を立てていた
悠然と泳ぐ姿は迫力があって
カッコいいなと思っていたけど
一所懸命に泳いでもどこにも行けない
そんな鯉が少し気の毒に感じていたし
もしかしたら鯉のぼりの鯉たちは
空を渡って行く雲を羨ましいと
思っていたかもしれない
だけど家族全員が同じ方向に向かって
泳ぐ姿はまとまりがあって
とても気持ちよさそうに見えた
そうか!泳ぐという行為は
必ずしもどこかに行くためばかりではなく
純粋に泳ぐことそのものを
楽しむことでもあるのか!
泳ぐから楽しのか楽しいから泳ぐのか
ぼくには分からないけれど
空にぽっかり浮かぶ雲も
身体をはためかせて泳ぐ鯉のぼりも
先のことに想いを馳せているわけではなく
今という時を楽しんでいるように見える
もうすぐ子供の日
鯉のぼりを見かけることは
少なくなってしまったけれど
少しでも多くの子どもたちが
幸せを感じる日になるといい
※ここのところ地上は風が強かったので
鯉のぼり以外のものも
あちこちで泳いでいるみたいです(笑)