自分を盛り上げろ!

なにか楽しいことでも考えて
明るい気持ちになろうとしてみたら?
と、もうひとりのぼくがぼくに言う。
無理に明るく振る舞おうとする
必要なんてないんじゃない?
と、
ぼくが弱々しく反対意見を述べる。
いつまでも暗い気持ちのままだったら
立ち直るきっかけを見失ってしまうぜ
と、もうひとりのぼくが自信たっぷりに言い、
そのでっかい手がぼくの肩に乗る。
相手の身体に触るのは
ルール違反じゃなかったっけとぼくが
つぶやいても手は肩に乗ったまま。
その手、ちょっと重いんだけどって
もうひとりのぼくを怒らせないように
ぼくが笑顔を作りながら言うと、
オレの手が重くて嫌だなと思ったらどうしたらいい?
と、もうひとりのぼくがぼくに聞く。
ぼくは指先でシッシッとその手を払い除ける仕草をした。
だけどそのでっかい手はびくともしない。
もうひとりのぼくは、さあどうする?って顔をしている。
ぼくは仕方がないから鼻を近づけて
手の臭いを嗅ぐフリをしてこう言った。
「砂肝、手づかみで食べたでしょ」
「えっ?」
「臭うよ」
もうひとりのぼくの手が肩を離れ訝しそうに鼻の方に動く。
ぼくはその瞬間を見逃さず猛ダッシュ。
もうひとりのぼくがキョトンとした後
やられた〜!って顔をしてぼくの走り去る後ろ姿を見送る。
作戦成功!ぼくは無意識に笑顔になった。
どうやら追いかけてきそうにないな。
ぼくは走るのをやめてふと思った。
あれ?ひょっとしてぼくっていま、明るい?
自分の気持ちを人に聞くか?アホ!
もうひとりのぼくの声が聞こえてきたような気がした。

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