海に続く甘い道。

♪伸びた影を歩道に並べ♪
 ロバートが小さな声で歌い出すと
 ♪夕闇の中をきみと歩いてる♪
 ってジュリアの声が重なる。
 ジュリアはロバートに合わせて低く歌う。
 時々ハモっているのかと思うけど、
 それはロバートが音程を外したせい。
 恥ずかしくなって声を落とすと
 ジュリアはロバートの手をギュッとやって
 大丈夫よと言うみたいに微笑む。
 一番を歌い終えた時点で
 ジュリアは不思議そうに尋ねる。
 なんでこんな暑い日に“雪の華“なの?
 なんとなくだよ。ふたり仲良く
 歩いてる歌ってこれしか知らない。
 あぁ、そういうこと。季節外れかな?
 おそろしく、ね。でも楽しいわ。
 ぼくもだよ。キーを合わせてくれて
 ありがとう。あとハーモニーもね。
 ロバートがそう言うと
 ジュリアはロバートの鼻をつまんで
 クチュクチュってやった。
 手をつないで歩くと一緒にいる感が半端ない。
♪きみがいるとどんなことでも♪
 今度はジュリアが二番を歌い出す。
 ♪乗り切れるような気持ちになってる♪
 ってロバートも混ざる。
 だけどやっぱりハモっちゃう。
 ロバートは恥ずかしくなって途中からフェードアウト。
 ジュリアは歌い続けている。
 美しくやさしく澄んだ声。
 ロバートの耳はジュリアの歌声を追う。
 “雪の華“が50番くらいまで
 あればいいのにってロバートは思う。
 素敵な歌声に包まれながらロバートはいま
 ジュリアの横にいて仲良しの印みたいに
 手を強く握っている。


