ゆったりしたひととき。

眼下に開放的な芝生広場が広がり、
 その向こうに映る東京湾は
 まるで大きな川のように見える。
 ぽっかりとそこに浮かぶタンカーと
 よく晴れた青い空に浮かぶ白い雲が
 同じような速度で流れていた。
 白を基調とした近代的で美しい
 横須賀美術館の建物の中は
 静謐でゆったりとした空間が広がっている。
そこでいま開かれている酒井駒子さんの
 個展“みみをすますように“を観て来た。
 子どもがふとしたときに見せる
 表情や仕草を上手に切り取って
 そこに彼女自らの感性を重ねながら
 不思議な世界を描き出していく、
 そんな感じの素敵な絵だと思った。
彼女の作品からは音が聞こえてこない。
 そう思って絵の前に佇んでいると、
 徐々に雪が降り積もる音や
 ブリキの箱をそっと置く音、
 風が吹く音、車輪が床を転がる音・・・
 そういう音が聞こえてきそうで楽しい。
 作品のほとんどはA4サイズに
 収まってしまうほど小さいのだけれど、
 その中に彼女らしい瑞々しさがギュッと
 詰まっているようで観ていて飽きない。
 ぼくはかなり長い時間、
 彼女の絵の中に息づく不思議に
 触れていた気がする。



