夢の枕(1/6)

もしも見たい夢が自由に見られる機械が
 発明されたとしたら
 あなたはどんな夢が見てみたいですか?
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「もし!そこの目がショボっとして
 顔がボーッとしていらっしゃる方」
 「えっ、それってひょっとしてぼくのこと?」
 「さいでございます」
 「ぼくはボーッとなんかしていないよ」
 「これは、これは、これは。とんだ失礼を。
 ん~、ではなんとお声かけを・・・」
 「もういいです!用件はなんなんですか?」
 「用件・・・」
 「だってぼくに用があるから
 呼び止めたんでしょ?」
 「そうでした、そうでした!
 つかぬことをおうかがいしますが、
 あなたさまは、最近、夜、
 ぐっすり寝られていらっしゃいますか?」
 「寝られて・・・そんなこと、
 どうして答えなくちゃいけないの?」
 「いえね、じつは私こういう者で」
 「快眠社 ピロー事業部 夢野荒野・・・
 あなた、名刺で遊んでいるでしょ。
 名刺の形も枕みたいだし」
 「いえいえ、滅相もございません。
 東証三部のきちんとした会社ですし、
 私の名前も本名でございます」
 「ふーん、それで?」
 「実は弊社ではこの度、今までにない
 画期的な枕の開発に成功!
 ただいまモニタリング・キャンペーン中でして
 ぜひともあなたさまにお試しを
 お願いできないものかと、
 お声をかけさせていただいた次第で」
 「ヘ~、どんな枕なの?」
 「単刀直入にズバッと申し上げます。
 この枕に頭を乗せてお休みになられますと、
 お望みの夢が見れるんです」
 「ねぇその枕、どこから出したの?」
 「私ども営業部隊は全員背中に背負ってるんです」
 「背中に背負ってる?ヘンなの~。
 あなたここまでその枕を背負って
 電車に乗ってやって来たの?」
 「さいでございます。
 あなたさまにお会いするために」
※夢の枕(2/6)に続きます。


