休憩時間に。

土台はなんの樹なんだろう。
樹全体を覆い隠すように繁茂するノアサガオ。

「これじゃ樹のほうが
光合成できなくて気の毒じゃん」
「あら、失礼しちゃうわねぇ。
あたし、ちゃんとゲンちゃんから
承諾をもらっているわ」
「ゲンちゃん?ゲンちゃんって
その樹の名前なの?」
「そ。あたしはミミ。あなたは?」
「オレ、片桐」
「カタギリ?不思議な名前ね。ま、いいわ。
で、カタギリはわざわざここまで
あたしにイチャモンをつけに来たの?」
「違うよ!海を見ながら走っていて
苦しくなったからって立ち止まったら、
目の前にキミたちが現れたのさ。
ずいぶん樹が悲惨な状況だなって」
「だからー、さっきも言ったでしょ?
ちゃんとお許しをもらっているって」
「それで、いいって?そのぉ・・・」
「ゲンちゃんよ。あなた、あたしの話
ちゃんと聞いてる?
あたしとゲンちゃんはねぇ
長い付き合いなのよ。
それでね、あたしが芽を出した時に
ぼくの根元じゃ陽が当たらないだろうから
どんどん伸びてぼくに巻き付いて
早く登っておいでって言ってくれたの。
やさしいでしょ、ゲンちゃん」
「本当なのかい?ゲンちゃん」
「ああ本当さ、カタギリ」
「キミたち植物の世界では人間の名前を
呼び捨てにするのが流行っているのかい?
まあいいや。それで光合成はできてるの?」
「さすがにここまで覆い尽くされるとは
思ってなかったよ、カタギリ」
「いちいちオレの名前を付け足さなくていいから。
なんか取調べを受けてるみたいじゃん」
「でもちゃんと隙間を作ってくれてるから
光合成は問題ないし、冬の寒い時期は
ミミが抱きついてくれてるおかげで
ポカポカ。仲良くやってるよ。カタギリ」
「ほらね、あたしの言った通りでしょ?
あたしたちは持ちつ持たれつの関係なの。
お花だってかわいいでしょ?」
「ミミが光合成できるのはゲンちゃんのおかげ、
ゲンちゃんが冬に凍えなくて済むのは
ミミが巻き付いてくれてるおかげってわけか。
ラブラブなのかい?」
「そうよ。ね?ゲンちゃん」
「う、う、うん!ミミ、もっと
しっかりぼくに巻きつきなよ。
海風に吹き飛ばされないようにさ」
「まぁ嬉しい。ゲンちゃん・・・好きよ」
「ぼくもさ!」

「あのぅ、オレ、もう行っていい?」
「なんだカタギリ、まだいたのか!」
「お生憎様。記念にラブラブなところを
写真に撮らせてくれるかい?」
「いいよ。上手く撮るんだぞ、カタギリ」
「うるせ〜!」

ってな感じの休憩時間でした。

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