朝の散歩で。

まるでマッチ棒をばら撒いた
みたいな寒緋桜の実。
お花見の季節が終わって
花が結実したものの・・・

「いくらなんでもこんなに
硬い地面に落とされたんじゃ
芽を出すことなんてできないわ」
「そうよね。いっそ強い春風に
舞い上げてもらいましょうよ。
そしてここじゃないどこかに行ってみるの」
「どうせだったら景色のいいところで
ふかふかな地面、日当たりバッチリの
ところがいいわよねー。
そして春の暖かな陽を浴びながら
のんびり梅雨を待つの」
「でも私たちって風に乗って
飛べるようなカタチじゃないわよ」
「そうかぁ。あっ、そうだわ、
鳥さんたちに運んでもらうのはどう?」
「それ、なかなかいいアイデアね。
食べられちゃうのは怖いけど
種を遠くまで運んでくれるなら鳥さんに
運命を任せてみるのもひとつの手かも」
「あなた、すごく美しい赤ね。
目立つから真っ先に食べてもらえそうよ。
わたしなんかもうすっかり色褪せちゃったわ。
きっと鳥さんたちからは見向きもされない」
「そんなことないわ。あなたの実の色が
変化したのは熟して甘くなったからだと思うわ。
鳥さんたちはそれを知ってるはずよ」
「そうよ。きっと真っ先に
種を運んでもらえるんじゃないかしら。
そこいくとわたしなんかまだ赤くて硬い、
おまけにお肌ツルスベで
すごく艶やかなんですもの、
当分運んでもらえそうもないわ」
「ちょっと待って、なんかその言い方
棘を感じるんだけど」
「棘?わたしはバラでも山椒でもないわ。
あなたと同じ桜の実よ。
ただあなたより若くて美しいだけ」
「キ〜〜〜〜!!
言わせておけば言いたい放題。
あなただってすぐに色褪せるのよ。
そうなれば私の気持ちが・・・
分かるわけないわね。
あなたなんかムクドリやカラスに
運ばれて苔の生えてるところにでも
落とされちゃえばいいのよ!」

・・・なんでこんな展開に(笑)。
ほんとはもっとなんというか、
ほんわかした話にしたかったよ。
寒緋桜の実たちよ、気にしないでくれたまえ。

あっ、フレディ!
キミは鳥じゃないんだから食べちゃダメ!

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