その先の感情の中で。

「ねぇロバート、
ちょっとセンシティブな
質問をしたいんだけど、いい?」
「センシ・・いいよ。なんだい?」
「このあいだ、ロバートは
さみしさを感じる時はないって
言ってたけど、あれ、ホントは
わたしを喜ばそうと思ったからよね?
さみしさを感じない人なんて
わたし、いないと思うの。
ロバートは今までにどんな時に
さみしさを感じてきたのかを
ちょっと教えてほしいなって」
「えーとねぇ、いくら説明しても
自分の考えや気持ちが
伝えたい人に伝わらない時。
追い続けてきた夢をあきらめた時。
周りの人たちが楽しい時間を過ごしていて、
その輪の中に入っていけない時。
それと、わかっていると思うけど、
ジュリアに会いたくても会えない時」
「あーっ、私を後回しにしたわね」
「ごめん。そんなつもりじゃ・・・」
「いいの、わかっている。
そんなことでわたし、怒ったりしないわ」
「そういうことを聞くってことは、
ジュリア、いまなにかさみしく
感じてることでもあるの?」
「ううん。そうじゃないわ。
さみしいという感情には
どのくらい種類があるのかなと思って。
たとえば愛する人にしばらく
会えない時のさみしさは、
愛されていないと感じた時のさみしさとは
明らかに違うわよね。
ロバートがいま言った夢をあきらめた時に
抱くさみしさも同じじゃないと思うし、
楽しいパーティが終わって自分の部屋に
帰って来た時に感じるさみしさも違うと思う。
説明できないけどただなんとなく
感じるさみしさだってあると思うの」
「人間の感情って複雑だからね。
だけどこの世で愛する人が去っていく時に
感じるさみしさはなんといっても
さみしさのチャンピオンだと思う」
「それ、言いたいことはわかるけど
あまりいい表現じゃないわ」
「ぼくも自分で言っててそう思った」
「つまりさみしさにはタイプが
あるってことよね?」
「あぁ、言われてみればそうかも知れない。
タイプもあれば強さもそれぞれだろうね」
プチさみしさとかメガさみしさとか」
「ロバートがいままでに感じた
メガさみしさってどんな時?」
「ぼくはまだ未体験。
そこまでディープなさみしさは
味わっていないと思う」
「それはラッキーね。わたしはあるわ。
飼っていたコノハカメレオンのモモが
死んじゃった時よ」
「はぁ?亀じゃなくカメレオン?」
「そうよ。まるで木の葉のように小さくて
ずんぐりむっくりしてるの。
わたしの高校時代の親友だったわ。
でね、そのモモがこのあいだの夜、
夢に出てきてくれたの。
懐かしくて嬉しくてわたし泣いちゃった」
「それはよかったんじゃない?」
「うん。夢の中ではモモ、しゃべれるのよ」
「へー、どんな話をしたんだい?」
「それがねぇ、覚えてないの。まるっきり。
でもすごく楽しいって気持ちだけは
ちゃんと残っているの。
声は目玉おやじみたいだったわ」
「目玉おやじ(笑)!案外夢ってそんなものかもよ。
それがどうしてメガさみしい体験なんだい?」
「目が覚めた時、モモにもう一度
会いたいっていう強烈な感情に
わたしの心が支配されたみたい。
涙があんなに出たことなんてなかったから
ちょっとびっくりしちゃった」
「きっとまたいつか出てきてくれるよ」
「だといいんだけど。
その時はたっぷりおしゃべりして
その内容をちゃんと覚えておかなくちゃね。
ものすごく大事なことを
教えてくれるかも知れないし」
「モモが間違えてぼくの夢の中に
出てきちゃったらどうする?」
「そんなことありっこないわ。
だいいちモモはロバートの名前すら
知らないんだから。
モモの親友はわたしだけなのよ」
「それもそうだね。ぼくの夢の中に
出てきて欲しいのはジュリアだけだからね」
「まあ!・・・ロバート、キスして」

チュッ!

「ジュリア、ところでジュリアの夢の中に
ぼくが出てきたことは今までに何回くらいある?」
「そういえばまだ一度も・・・あっ!」
「なに?」
「エントランスの電球が切れたとき
交換しにきてくれたことを思い出したわ」
「はあ?電球の交換・・・」
「冗談よ。その答えは秘密にしておきたいの」
「秘密・・・それいかにもジュリアらしい。
ねぇジュリア、話変わるけど
明日一緒にかき氷でも食べに行かない?
鎌倉に美味しそうな店を見つけたんだ」
「いいわね。賛成!楽しみ〜!
今夜はロバートの夢を見そうだわ」
「ぼくの夢を見た後で泣いたらダメだよ」
「泣くわけないじゃない。
だって明日また会うんですもの」
「ぼくは今夜ジュリアの夢を見ようっと」
「じゃあ、わたしの出演料はかき氷代と相殺ね」
「それなら、やっぱやめておこうっと」
「なによそれ!強引に押しかけてあげるから」
「ひぇ〜〜〜!」

※いくら待ち時間が退屈だからって
なんか書いていて途中で虚しくなるんですよ。
虚しさって寂しさを通り過ぎたあたりに
ある感情なのでしょうかね。
コノハカメレオン、かわいいです。
写真のクルマはFIAT500。
スーパーの駐車場で見かけました。
大好きなクルマのひとつです。

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