黒焦げになる前に。

そばに寄って観察してみると
本当に太陽みたいだった。

太陽よ
その獰猛な熱で
ぼくの身体を焼き尽くせ
その眩いばかりの光で
ぼくの心臓を貫き通せ
我が身滅ぶとも
我が情熱灰を生まず
我が魂の鼓動は盛んなり

「ホントにいいの?」
「えっ?」
「黒焦げにしちゃって」
「だ、だ、ダメに決まってる」
「だって今そう言ったじゃん。
身が滅んでも魂は生き続けるって」
「勢いだよ、勢い!
そのくらいの気概をもって
この夏を乗り切ろうと思っただけ」
「な〜んだ、ただ大口叩いただけか」
「失礼なことを言うな!
よ〜し、面白いじゃん。
黒焦げにできるものならやってみなよ。
ただの向日葵の分際で大口叩いてるのは
キミの方じゃない」

「あー、もしもし、お父さん。
ぼくの前に黒焦げにして欲しいって
オジサンが来てるんだけど」

「・・・お父さんって・・・だれ?」
「空をごらんよ。あれがぼくの父さん。
ぼくの父さんは核融合が得意なんだ。
スポットビームが必要な時は
いつでも遠慮なく言いなさいって
父さんから言われてるんだ。
あっ、今発射されたみたいだよ」
「ひえ〜〜〜」

ご主人様、向日葵さんとの
語らいはそのくらいにして
そろそろ帰りませんか。
あっし、お腹が空きました。
「そうだな、帰るとするか」

おっしまい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

gooblog

前の記事

海辺にて。
gooblog

次の記事

時の箱の中で。