静かな美しさ。
エドワード・ホッパー(1882-1967)はアメリカ大恐慌をはさんで
第一次世界大戦での経済特需期から第二次世界大戦後までの
激動の時代を生きた画家。
アメリカ映画の一場面を切り取ったような情景描写、
殺伐とした大都会の孤独、どことなくメランコリックな女性、
牧歌的な情景描写など幅広い絵を描きながらも
彼独特のリアリズムに基づき余計なものを廃した構図や作風は
どの絵にも一貫して流れている。
そんな野暮な解説めいたことは本当はどうでもよくて、
ぼくは彼の絵を観るたびにいつも不思議な魅力に絡めとられ、
ただただ深く見入ってきた。
そんな感想をかつて自分がもっていたことを急に思い出して
無性に画集が欲しくなった。
この忌まわしいウイルスのせいで自由に出歩けない自分がもどかしい。
そんな衝動を紛らわせるため仕事の手を止めてネットの中に
彼の絵を見つけては時が止まったような不思議な感覚を味わっている。
絵の中で止まったままの時間と自分の頭の中に流れている時間の質が
あまりにも違っているなぁ。