龍を見たその夜に見た夢。
“それ”は弾力があってとても柔らかい
つねに温かく脈動し輝いている
どんなふうに柔らかいのか
どのくらい温かいのか
どんなリズムを刻んでいるのか
どういう輝き方をしているのか
知りたくて近づきたくて届きたくて
“それ”に向かってひたすら突き進む
荒い呼吸 吹き出す汗 狭くなる視界
“それ”は次の瞬間忽然と目の前から消えた
どれだけ時が経過しただろう
落胆と祈りの気持ちが交互に去来し
幻影と幻聴がともに生まれては消えてゆく
ひたすら真っ直ぐ向かっていたのに
“それ”を見失ってしまった空白の中で
意識がひどく混濁する
“それ”を求めて伸びていた私の手は
風雨に晒されてもはや悴んでしまった
風は強まり頭上高くに層の厚い雲を呼ぶ
遠くで季節外れの雷が鳴り始めた
きっと雷神が私を探しているのだ
恐ろしい閃光が私の身体を貫く
私の魂は宇宙空間に放り出され
不規則な回転をしながら漂う
神の怒り 炎の刑罰 漆黒の眺望
おそらく遠くに見えたあの小さな光は
月の反射光だったのだろう
まもなく私の剥き出しの魂は
炎の刑罰から解放されて
暗闇の中で”それ”に触れる
それから私は渾身の力で抱き締め
安堵して眠ってしまうのだった
“それ”は弾力があってとても柔らかい
つねに温かく脈動し光っている
だけど誰ひとりとして
“それ”に名前を与えることができない
“それ”は現実の世界の外側に
存在しているものだから
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2024年の初夢はこんな感じだった。
できるだけ忠実に書いたつもりでも
見た夢の通りには言葉で再現できない。
この夢がいい夢だったのかそうでなかったのか
私には分からない。
ただ目が覚めた時なぜか私は少し泣いていた。