頑固者。

「あー、ちょっと、きみ、きみ!
きみだって言ってるでしょ」
「あっ、えっ?ぼくっすか?」
「きみねぇ、この会議室には
わたしときみしかいないんだよ。
わたしがきみと言ったら
きみのことに決まってるでしょうが」
「それは失礼しました。で、なんすか?」
「きみってくだらないねぇ」
「はっ?」
「ほれ、きみの書くヘースブックの
ことだよ。あれは読むに耐えない
代物、じつにくだらん!」
「フェイスブックっすか?
読みたくなければぼくの投稿を
非表示にしてくれて構わないっすよ」
「投稿を非表示に?きみの投稿だけ?
そんな設定ができるのかね」
「カンタンすよ。ちょっといいっすか
ここを開いてと・・・・」
「あっ、ダメダメ!そんなことしたら
読めなくなってしまうよ」
「えっ、だってぼくの投稿、
読みたくないんでしょ?」
「読みたくないとは言っとらん」
「だっていまくだらんて・・・」
「このfのマークのところに
赤い印がポチッとつくだろ?
そしたらユリちゃんが
投稿したのかなって思うでしょ、
フツーはさ」
「・・・ははーん、部長!
そう思ってウキウキしながら開いたら
それはぼくの面白くもなんともない
投稿だったと。だからとってもけしからんと」
「そーゆーことー!」
「その赤いポチッっての、
それだって設定でどうとでもなるんすよ。
ちょっといいっすか」
「ダメ!そんなことしたら
更新されたかどうかが
わからなくなっちゃう」
「ぼくの投稿だけっすよ?
ユリちゃんのはそのまま」
「きみはそれで構わんのかね」
「ぜんぜんいいっす。
どうせくだらない内容っすから」
「わたしに読まれなくて、
きみは淋しくないのかね」
「はっ、淋しい?」
「だってそうじゃないかね。
きみが必死になって書いたものが
だ〜れにも読まれないなんて
きみ、耐えられんだろ」
「ん〜、そんなこと考えたこと
なかったけど、そう言われてみれば
たしかにそうかも知れません。
でもぼく、だ〜れにも
読まれなくたって書ける。
てか、書いちゃう。それでいいっす」
「ホントにそれでいいのかね。
わたしに”いいね”ボタンを押して
欲しいんじゃないかね。
ほれ、きみの中にいるもうひとりの
自分はなんと言っとるかね」
「はっはーん。部長、ぼくの投稿、
くだらないと言っておきながら
けっこう読んでくれていそうっすね。
くだらなくてアホらしくて
読んでいると目眩とか頭痛が
しそうだけど、ついつい読んじゃう。
そうじゃありませんか?」
「図星だよ。あはは!じつにくだらんけど
なんとなく読んじゃう。だけど
“いいね”ボタンはぜったい押さないし、
コメントも書かない」
「・・・ぼく、部長から何かコメントを
もらえたら嬉しいっすけどね」
「ホントかね、片桐くん。
じゃあ今度、気分がノリノリだったら
書き込むかね、コメントを、さ」
「ブチョー!!!」
「わかった、わかった。
そんな会議室から漏れ出るような
大声で叫ばんでも」
「今夜さっそく投稿してみますから」
「んーん!うい奴じゃ」

あーめんどくせー!
気の合う友だちとならすっごく楽しいのに
価値観や波長がずれている人との
コミニュケーションてちょっと大変。
でもぼくはこういう部長は大好き。

******************
これは3年ほど前に書いたものです。
あの頃に比べ今はFacebookを
やっている人はグッと減りましたね。
私のFBはまるでシャッター通り商店街を
石蹴りしながら歩いているみたい(笑)。
たまに友だちのFBに立ち寄っても
”誕生日おめでとう”のやりとりしか
なかったりするところをみると
今となってはFBは面倒臭いSNSの
ひとつなのかも知れません。
かくいう私もあまり投稿しなくなりました。
下火になったとはいえコロナ禍がずっと
続いていて変化に乏しい日常を送っていると
投稿したくなるようなことも
めっきり少なくなりましたしね。
プライベート的な内容の投稿は
ブログじゃ気軽に書けませんし。
なにもなくたって会って話をするという
アナログなコミュニケーションほど
すぐれたものはないということに
みんなとっくに気づいているのでしょう。

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