運命に翻弄されながら。

”この島の人間は、夢を見ない。
 島の中ほどにある小さな山の上に
 朽ちかけた祠があり、
 そこに棲む獏が夢を喰ってしまうのだ”
こういう書き出しでこの小説は始まる。
 つかみ、最高でしょ?
 主人公の白亜という名の女の子には
 物心ついた頃からスケキヨという名の
 不思議な男の子がいつもそばにいた。
 ふたりは一心同体のように日々を過ごし
 互いの名前を呼び合うことで
 自分自身が存在することを見出した。
 小説の舞台は一大遊郭がある架空の島。
 白亜は成長すると遊女になり、
 スケキヨは島の反対側にある裏華町に
 蔭間として売られていく運命にあった。
千早茜の”魚神(いおがみ)は
 他に類を見ないとても不思議な小説。
 つかみからつかまれっぱなしでした。
 しばらくこの作家の本を何冊か
 読んでみたい、強くそう思うのでした。


