輝いていたフルーツ。

マルエツに夕飯の食材を買いに行ったら

果物コーナーにシャインマスカットが

棚の上に並べられていてその中の一房が

オーラを出しているように輝いて見えた。

目の錯覚かもと目を擦っても輝いている。

(以下シャインマスカット=SM)

不思議なことがあるもんだなぁと思いつつ

素通りしようとしたら声が聞こえてきた。

「私を買わなかったらただじゃおかないから」

誰だか分からず条件反射的に振り向いて

キョロキョロと辺りを見回すと

「気づいているくせに。とぼけないで!」

声の主はオーラを放つそのSMだった。

ぼくが目を丸くして凝視すると

SMの色はぼんやり輝く翡翠色から

鮮やかな蛍光グリーンに瞬時に変わった。

もはやSMはオーラを放つ果物というより

よくできた照明のように見えた。

「喋れるフルーツを見たのは初めてだよ」

意外に落ち着いている自分の声に驚き、

そう答えるとSMはたたみかけるように

「さっさと私をそのカゴに入れなさいよ」

「ゴメン、今日は夕飯の材料を

買いに来ただけなんだ」

「デザートは買わないの?」

「仏壇に昨日買った桃があがっているから

それをおろしていただくつもりだよ」

「それ、冷えてないでしょ。

冷たくして食べないと美味しくないわよ。

私ならあなたが夕飯を食べている間に

カンタンに冷えてあげられるわ。どう?」

SMの言う通りだった。

値段のラベルを見ると1,280円。

「だけどそんな贅沢はできないなぁ。

キミはぼくにとって高嶺の花だよ。

でもなんだかちょっと欲しくなった。

せめて3割引でポイントが5倍の日だったら

間違いなく買っていたかも」

「まぁ!この私を値切るつもり?

サイテーね。いいわ。諦めました。

あなたなんかに声をかけるんじゃなかったわ。

後ろの人に買ってもらうことにするから」

「後ろの人?」

振り返るとすぐ後ろに舘ひろしが立っていた。

白い歯を見せてぼくに笑いかけている。

(ぼくの夢に舘ひろしさんはよく出てきます)

「ちょっと後ろからすみません」

舘ひろしは穏やかな声でそう言うと

ぼくの右横から手を伸ばして

蛍光グリーンのSMを手に取りカゴに入れた。

それを見たぼくはなにを思ったか咄嗟に

「そのSM、今ぼくが買おうと思ったんです」

と言ったけれど声はビビッて裏返っていた。

「あっ、そうでしたか。それは失礼しました」

舘ひろしは落ち着いた声でぼくに謝ると

自分のカゴからぼくのカゴにSMをそっと移し替えた。

舘ひろしはぼくの夢の中でも紳士だった。

ぼくはペコリと頭を下げてその場を後にした。

今夜のメニューはクラムチャウダーだと

心に決めていたのだけれど

SMをカゴに入れてしまった関係で予算オーバー。

広告に載っていた地ハマグリではなく

その横にあったアサリをカゴに入れ

レジに向かうところで夢から覚めた。

どうせだったらシャインマスカットを

食べるところまで夢の中にいたかった。ぜ!

※写真は今朝のサラダ。

ペコリーノロマーノチーズを削ってふりかけ

オリーブオイルを回しかけていただきました。

朝のデザートは梨、ちょっと若かったみたい。

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