記憶の海の中で。

海に住むイカの仲間の

ヨーロッパコウイカはどこで何を

いつ食べたのかを覚えていて、

その記憶をのちに餌を獲る時の参考にしている。

さらに驚いたことにイカたちがこの能力を

加齢で失うことはないという。

また、彼らは好物の獲物が現れるまで

あまり好ましくない獲物を捕獲するのを

我慢する実験に優れた成績を残した、と

ケンブリッジ大学の研究者である

アレクサンドラ・シュネル氏は言う。

記憶というものは特定の過去の出来事を

思い出す”エピソード記憶”と

学習した知識を思い出す”意味記憶”に大別され、

エピソード記憶は加齢によって衰え、

意味記憶のほうは衰えないらしいのだけれど

ヨーロッパコウイカのこの実験による記憶は

エピソード記憶でありながら、

それが加齢によって衰えることがなかったと。

イカばかりではなくカケス(鳥)は

自分で捕獲した獲物をいつどこに蓄え、

その獲物が何であったかを記憶できる。

翻って私の場合はどうだろう。

どこに何を置いたかを頻繁に忘れ、

人生の大切な時間の十分の一くらいは

その探し物に費やされている。

厳しい自然界の中に放り込まれたら

私は北斗の拳のケンシロウから

こう言われるに違いない。

お前はもう死んでいる!

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