蘇った楽しみ。
アーネスト・ヘミングウェイの短編集
”われらの時代”に収められている
”心の二つある大きな川”の川は
ミシガン州のスペリオル湖に河口を持つ
Two Hearted Riverのことらしい。
ぼくはこの短編集を大学時代に読んでいる。
第一次世界大戦のイタリア戦線で傷ついた
主人公ニック・アダムスが北アメリカの
大自然の中でキャンプと釣りをすることにより
次第に心が癒されてゆく姿が描かれている。
その平明で無駄のない淡々とした文体は
ハードボイルド小説の原点として
後の多くの作家たちに影響を与えている。
なぜこの本のことを書いたかというと
先日友だちと話をしていて
話題が釣りのことになったとき、
急にこの本のことを思い出して
無性にまた読み直してみたくなったのだ。
40年ぶりにその本を目で追っているうちに
この本を読んでいた当時のことを
あれこれと思い出して
ひどく懐かしい気持ちになった。
もう何年釣りをしていないだろう。
小学生だった頃は父親に連れられて、
中学校に上がってからは友だちと、
社会に出てからも何度か行っているけれど
いずれも海釣りばかり。
小説に描かれているような川での
フライフィッシングではなかった。
だけど海釣りにしろ川釣りにしろ
釣りをしている時間は釣りに集中し
ほかのことはいっさい何も考えずにいられる。
渺茫たる海の景色の中にいるだけで
なにか重たいものから解放されて
心が軽くなっていく感じがしてとてもいい。
ガレージにはまだ当時の竿もリールもある。
秋がやってきて少し涼しくなったら
クルマに竿を積んで出かけてみようと思う。