聞こえてこない声。
日本はアメリカと仲がいい。
その”日本”の中には”私”も含まれているから
私もアメリカと仲がいいことになっている。
そして私は日本で暮らしているから
”ニシガワ”の情報(言い分)に日々晒されていて
”ヒガシガワ”の情報にはあまり接していない。
2年以上も続くロシアのウクライナへの侵攻は
一方的にロシアを非難する情報で溢れている。
だけど喧嘩が起こったらどうして起こったのかを
当事者の双方から聞くことなしに
正しい判断ができるわけがないのです。
1991年8月にソビエト連邦で
クーデター未遂事件が勃発し体制が崩壊して
ワルシャワ条約機構も解体されると、
NATOが勢力を東へ東へと伸ばしていきます。
NATOは1999年の第四次拡大で
ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリーの
ヴィシェグラード三国を取り込んでしまい、
このときロシアはNATOに対して
バルト三国には拡大するな、
これがレッドラインだと抗ったにも関わらず、
2004年にはそのバルト三国に加え、
スロバキア、スロベニア、ブルガリア、
ルーマニアの計7カ国も加入させてしまった。
さらにこれと並行して別の旧東側諸国も
次々にNATO加入の動きが広まり、
ジョージア(前グルジア)ではバラ革命、
ウクライナではオレンジ革命、
キルギスではチューリップ革命が起きて
親米派の国々が続々と誕生すると、
ロシアの視点からすれば、
遥か彼方に見えていた炎が我が身に
迫ってくると感じるのもわかる気がします。
またウクライナという国は
決して一枚岩などではなく、
リヴィウなどのある西部のガリツィア地方は
反ロシア的な民族主義勢力、
ノヴォロシアと呼ばれる東部と南部は
歴史的にロシア系の人たちで
ロシア正教の影響力が強い地域、
そして首都キーウのある中部は
ロシア系、ウクライナ系の混在する地域。
ウクライナが新米路線を辿るようになると
母国語がウクライナ語に統一されたことで
母国語で書類を書けないロシア系の公務員は
職を失うことになります。
これは”圧力”の一例に過ぎないとのことですが、
こうした東部ドンバス地方の人々にとって
受け入れ難い政策が次々に打ち出されたことで
ロシア系住民の鬱憤は溜まっていきます。
こうした背景があってあのような戦争が始まった。
そういうことをこの本で知りました。
ゼレンスキー大統領はクリミア半島を含む
侵攻された地域すべてを是が非でも取り戻そうと
兵士を戦地に送り続けていますし、
西側諸国もウクライナをバックアップしているので
この悲惨な戦争が終結する糸口さえも
未だに見つけられない状態が続きます。
ロシアはウクライナという独立国家に
武力で侵攻したわけですから当然
非はロシアにあります。誰が考えても明らか。
ですが侵攻するにはそれなりの理由がある、
そのことをもう少し考えてみたい。
そんな感想を持った一冊でした。