耳と口と封筒の話。
何だかふと思いついたのですが、
話し言葉っていったん封筒に入って
相手の耳に届くような感じがするんです。
その封筒が届いただけで
相手は聞こえたような気になっている。
ちゃんと受け答えをしてさえいれば、
話す方もその人に届いていると
思い込んでしまうのかも知れません。
でもせっかく耳に届いた封筒入りの言葉を
開封しないままどこかに仕舞い込んでしまっては
話し手の真意が理解できません。
こんなことを感じるのは私だけなのでしょうか。
私は時々、いや、かなりの頻度で
その過ちを犯してきたような気がする。
相手の話す内容に興味が持てなかったり、
会話の途中で別のことを考えてしまったりすると、
封筒を開けることなく相槌だけ打って引き出しの奥へ。
これでは人の話を聞いていないということになります。
また、言葉の入った封筒には
差出人の名前は書かれているものの、
宛名が書かれている場合と
書かれていない場合があることに気づきます。
1対1の会話は前者だけれど、
セミナーなどで壇上から不特定多数の相手に
語りかける場合は後者ということになります。
私が学生だった頃、先生に聞いた話なのですが、
クラス全員を前にして講義をしている時、
「今日はみんな集中して聞いているな」とか、
「みんな顔をこちらに向けているけれど、
まるっきり聞いていない」とか分かるらしいです。
それがどうして分かるのかずっと不思議でならなかった。
話す時も聞く時もちゃんと相手の目を見なさい。
よくこういう言葉を耳にするけれど、
これってとても大切なことだという気がします。
慣れないとちょっと恥ずかしい気がするけれど、
相手の目の動きを見て会話していると
自分の言っていることが相手に届いているかどうか、
また、相手の言っている言葉をきちんと
受け止められているかがわかります。
要するに相手の言葉が入った封筒が耳に届くたびに、
たちまちその封が切られるということです。
その封を切る音は相手にも自分にも聞こえる。
「あっ、いま封を切ったでしょ」
「そういうあなただって」なんて思いながら
会話をしていると実に心地いいですね。
ひょっとして先生はその音が聞こえるか
どうかで判断していたのではないでしょうか。
男に比べて女性はいつでもどこでも
会話が好きそうに見えて時々羨ましくなります。
私の妻などはスーパーマーケットの特売コーナーで
ママ友と何を話しているかは知らないけれど、
よくもあんなに盛り上がれるものだと感心したりします。
男同士が特売コーナーで会話が盛り上がっているところを
私はあまり見たこともないし
私だって盛り上がる自信もありません。
でももし特売コーナーで顔見知りのお父さんに遭遇したら、
何らかの声をかけてみるのも悪くありません。
「おやっ、○○さん、夕飯のお買い物ですか?」
「えぇ、今夜は妻がクラス会で出掛けているので
自分の分の食材を買いに・・・」
「はぁー、そうですか。うちは妻に頼まれて
買い忘れたジャガイモを買いに来たんです」
「ジャガイモだけなら目的がはっきりしているから
パパッと買ってすぐに帰れますね。
私は夕飯を何にしようかを考えなければ
ならないのでアタマが痛い」
「今日はサンマが特売のようですよ。
根室のサンマ、目黒じゃありませんよ。
もちろん冷凍物でしょうけど」
「ぷっ!根室のサンマか。それ、いいですね!
アッハッハッハー」
男よ、どんどん会話を楽しもう!封を切りながら。