美しさは言葉。

しとしとと降る雨に濡れながら
 みんなで楽しそうにどんな
 おしゃべりをしているんだろう
 目を向けるばかりではなく
 ついつい耳を傾けてみたくなる
 紫陽花が開花しなかったら
 梅雨はただの鬱陶しい季節になってしまいそう
そんな紫陽花の季節がまもなく終わる
 あれほど瑞々しく咲いていた花が
 色を失くしていく様子を見ていると
 まだ梅雨も明けていないのに
 夏休みの終わりのような
 物悲しさを感じてしまう
 また来年ね、って声をかけながら
 箱にしまわれる雛人形を思い浮かべた
 そう、紫陽花は季節が巡ってくれば
 また瑞々しさを取り戻して
 美しい花を咲かせる
 人間もそんなふうだといいのに
紫陽花はつぎの開花まで
 どんなことを思いながら過ごすのだろう
 寂しさみたいな感情を抱くことも
 退屈な気持ちになったりすることもあるのだろうか
 言葉を発しなくてもその存在感は伝わってくる
 傘をさしながら植物の不思議を思う


