男らしい我が掌。

手の大きな子どもは将来お金持ちになれる。
 親戚の叔父さんはぼくの手を見てそう言い、
 母指球が肉厚だから申し分ないと笑った。
 自分の手をデッサンしながら
 そんなことを思い出していました。
 その叔父さんはもうずいぶん前に
 亡くなってしまったから真偽のほどを
 確かめることはできないけれど
 ぼくはその言葉をかなり長く信じていた。
 そして手の小さな友だちを発見すると
 口にこそ出さなかったけれど密かに
 可哀想だなぁと憐憫の情を抱いたものだった。
 あの頃から長い年月が経過して
 我が手をこうして改めて眺めてもやっぱり
 自分の手は大きいほうだと思う。
 母指球だってふっくらしている。
 だけどお金持ちにはなっていない(笑)。
 叔父さん、お金持ちにはなっていません!
 どうしてなんですかね。
 それともなれるのはこれからなんですかね。


