消えない思い出。
もうずいぶん前のこと。
今の建物(写真)になる前はここは普通郵便局でした。
母は女学校を卒業すると同時に国家公務員として採用され、
私が大学を卒業するまで郵便局員としてここで働きました。
24歳の時に同僚の紹介で父と知り合い結婚したのですが、
初めてデートをした夕方、
中華料理店(たぶん中華街)に入って
母は父になにを食べるか聞かれ
お腹がとても空いていたにも関わらず
慎ましくラーメンでいいと。
母の言葉を額面通りに受け取った父は
そのまま自分の分と合わせ
ラーメンを二人前注文したらしいです。
もっと豪華なものにしようと
言い出してくれることを期待していた母は
ひどくがっかりしたと話したことがあります。
あの時遠慮なんかするんじゃなかったわ。
そう笑いながら話す母の顔は
なんだかとても幸福そうでした。
私はこの町で生まれ小学校を卒業するまで
ここで育ったから思い出す場所はとても多いです。
いつも仕上げにシッカロールを
無理やり鼻筋に塗る理髪店の店主、
大嫌いだった保育園のやさしい先生、
人形劇が得意だけどすごく怖い小学校の担任の先生、
私を笑わせるのが得意な歯医者さん、
恐ろしいアデノイドの除去手術を受けた
鷲鼻の外国人みたいな耳鼻科の先生、
野球の練習に明け暮れた国大グラウンド、
大好きだったクラスメイトの女の子の家、
溺れかけた学校のプール、
ひどい事故を目撃した交差点、
よく遊びに行った伊勢佐木町商店街
お化けが出そうなほど不気味な近くの高校のヒマラヤ杉・・・
2年前からはフレディ(雄犬)も加わったことで
朝の散歩はかなり遠くまでフレディと足を延ばします。
町を歩いているとまるで過去が蓋を開けたみたいに
次から次へと思い出すことがいっぱい。
この懐かしさは私の気持ちを
少し豊かにしてくれているみたいです。