流れない川。
ぼくは以前どこかに
“吉田拓郎が必要な夜もある”って
書いたことを覚えているのだけれど
昨夜は美空ひばりが必要な夜だった。
本当は歌そのものよりも、
そのずっと先にあるものに
ぼくは触れたかったのかも知れない。
心のどこかが渇いてしまっていて
自分ではどうすることもできない、
そんな思いが募るばかりの夜は
思いつく好きなことに時間を使う。
それがたまたま昨日は美空ひばりの
“川の流れのように”だったのだと思う。
この歌は彼女にしか歌えない。
秋元康作詞の”川の流れのように”の川は、
同氏がニューヨーク滞在中に見ていた
近くを流れるイーストリバーのことで
そこから詩の着想を得たらしい。
一滴の水が雨となって木を伝い
地面に染み込んで川に合流する。
そしてあっちにぶつかり
こっちにぶつかりながら下って、
やがて広い海に出る。
そんなシーンを漠然と思い浮かべながら
ぼくは眠気がやってくるのを待っていた。
※写真は地元近くを流れる大岡川。
ぼくが子どものころは台風がくると氾濫して
その一帯の家々が床下浸水したりしていた。
あの頃に比べ今は治水の安全レベルが上がって
景観も良くなったけれど
この辺りは海抜が低く大雨が降ると怖い。
この時はずいぶん水位が上がっていて
水がどちらに向かって流れているのか
分からないほど静かに滞留していた。