永遠を探しに。
「あっ、ジュリア、それ、ダウト!」
「まあ、ロバート!どうしてわかるの?」
「だってふたりだけでやってるからさぁ、
ぼくの手札を見ればジュリアの手持ちが
分かっちゃうんだよ」
「あっ、そっか!
つまり、私に欠けているものを
ロバートが持っている。
ロバートに欠けているものは
わたしが持っている・・・
欠けているものをふたりで
補い合いながら今を生きているのね。
ステキなゲームだわ」
「いや、ゲームだからさぁ、
補い合うんじゃなく、
ぼくらは戦っているんだよ」
「わたしたち、戦っている・・・
愛のあるだまし合いの戦いね」
「しかも見え見えのね。
もう7時間もやってるよ。
永遠に終わらないんじゃないかって」
「ロバート、わたしたち、
今、永遠の中にいるの?」
「このままじゃそうなりそうだよ。
そうだ、いいこと思いついた。
ちょっと気分転換にふたりで
パスタを茹でて食べるってのはどう?」
「ステキな提案よ。冴えているわね、ロバート!」
「どんなパスタにしようか」
「アンチョビとポアロ葱の
シンプルなパスタがいいわ」
「おしゃれだね、それ!
じゃあ、マルエツに買い物に行ってくるよ
マルエツじゃポアロ葱は置いてなさそうだから
新鮮で太い長葱で代用してもいい?」
「オッケーよ。それじゃわたしは
お鍋に火をかけておくわね」
「美味しいわねぇ、このパスタ!
永遠の味がするわ。ロバートはどう?」
「なかなかいけてると思うよ。
だけどジュリアは本当に永遠が好きなんだね」
「だって永遠ってずっとずっと
変わらないってことでしょ?
この世の中はなにもかもが
どんどん変わっていくわ。
雲も街も人も。わたしの親友のミミも
このあいだご主人が替わったみたいよ。
だけどロバートだけは変わって欲しくない。
わたしの大好きなロバートのままでいて欲しいの」
「うん。ぼくだって変わりたくない。
でも歳を取ると髪も薄くなるし、
お腹も出てくるかもしれない。
記憶力だって衰える。
そうなったらジュリアはぼくのことを
好きじゃなくなってしまうかい?」
「努力をして!」
「わ、わ、わかったよ。努力はするよ。
でもぼくが歳を取って変わってしまっても、
ジュリアはぼくを好きなままででいてくれる?」
「変わり果てさえしなければね。
でもたとえビジュアルが多少変わっても
心が今のままならずっと一緒にいたいと思うわ」
「ありがとう!じゃあ食べ終わったら
ダウトの続きをする?それとも・・・」
「それとも?」
「それとも・・・」
「それとも?」
「それとも・・・」
「なによ、焦れったいわねぇ!」
男子ならはっきり言いなさいよぅ」
「自転車に乗って公園に星を見に行こうか。
ジュリア、今日誕生日だよね?
ふたりで夜空の中に永遠を探しに行こうよ」
「キャー!ロバート、
覚えていてくれたの?」
「ジュリアの誕生日を忘れることなんて
ぼくにはできないさ。
さっき買い物ついでに
スパークリングワインを仕入れてきたんだ」
「ステキよ!わたしたちの関係まで
スパークしちゃいそうだわ・・・
ねぇロバート、わたしたちって
永遠にスパークできそうかしら」
「あっ、ジュリアの瞳の中に
永遠の輝きを見つけたよ」
って時々こんなことを書いていて
オレはダイジョウブなのかって思うことがる。
だけど内側にたまっているマグマのような
ストレスがジンワリと噴火するみたいで
なんだかとても楽しい。