暗闇ちゃん。

「誰?そこにいま、隠れたでしょ!
ちゃんと見えたよ。チラッとだけどさ」
「・・・・・・・・・・」
「おっかしいなぁ。目の錯覚かなぁ」
「そうよ。見えた気がしただけよ」
「ほーら、やっぱりそこにいるんだね。
かわいいよ。誰なの?」
「・・・暗闇・・・・。悪い?」
「いや、悪くはないけど、クラヤミってなに?」
「真っ黒けの悪い気持ちの時の暗闇よ」
「真っ黒けの悪い気持ち・・・いったい誰の暗闇なの?」
「あなたのに決まってるじゃない。
あなた、いま有頂天な気持ちでしょう」
「あ、うん。だってチョー苦手だったソフトウェアが
やっと使いこなせるようになったんだ。
階段を2段飛ばしで駆け上って行きたい気分だよ」
「ほらね?そんな時って、私、必要?」
「あー、そういうことか・・・
だけどキミはぼくの暗闇なんでしょ?
ぼくの暗闇なのにぼくに黙って勝手に
ぼくから離れられるものなの?」
「私だって離れたくて離れたわけじゃないわ」
「じゃあどうして・・・」
「眩しすぎるのよ、あなたが。」
「プッ!それ、褒めてくれてるの?」
「いいえ、違うわ。間違わないで!
あなたが眩しすぎると私の居場所がなくなるの」
「そいつぁ気づかなくて悪かったよ。
だけどなにも隠れなくたっていいと思うよ。
いまは有頂天な気分を味わっていたとしても
ずっと有頂天なままでいられるわけじゃないしさ」
「すぐに私が必要になる?なる?なる?」
「そりゃあぼくだって人間だもの。
暗い気持ちの中で妬(ねた)み、嫉(そね)み、
恨み、辛(つら)みなんかを
覚えることだってあるかも知れない」
「まぁ、なんて素敵な音の響かしら!
妬み、嫉み、恨み、辛み。
あなたもどっぷり浸かってみたくなってきた?」
「暗闇の中にかい?」
「そうよ」
「いや。そんな人間にはなりたくないね。
自分の中に暗闇があることは仕方がないよ。
でもずっと暗闇の中で生きたいとは思わない。
たとえその中に放り込まれても
そこから脱出する方法を考える人間でいたい」
「じゃあやっぱり私って、
あなたにとっては邪魔者なのね」
「そんなことはないよ。
自分の中に暗闇を隠し持っているからこそ
輝きを見失わないようにしようと思えるんだ。
ぼくの言ってること、わかるかい?」
「ええ、わかるわ。じゃあ、私もいていいの?
あなたの身体の中に」
「かまわないよ。好きなだけいればいい」
「私、鼻つまみ者じゃない?」
「ない、ない。さぁ、いつまでもそんなところから
ぼくを恨めしそうに見つめていないで
早くぼくの身体の中に飛び込んでおいでよ」
「まっ!なんだか私の中にも
光が差し込んできたような気持ちになってきたわ。
前を向いて生きていいのね?私も」

タッ、タッ、タッ、タッ・・・ピョン!

そんなわけでぼくの中にも暗闇ちゃんが戻ってきたけど
暗闇ちゃんの中に光が差し込んだために
より一層輝いてる気分になった。

「あれ?いまそこに隠れたのは、誰?」
「・・・あなたの輝きよ。
暗闇ちゃんが明るくなって戻ってきたから
私はお払い箱。そうじゃなくて?」

やれやれ、どうしてぼくって
こうもめんどくさいんだろ。
さぁ、昼休みはもう終わり~!仕事、仕事!

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