忙しい死者。

葬儀に来てくれた弔問客に対して
お礼の気持ちを表したかったのだろうか。
あるいは喪主や家族の気持ちを
和らげたかったのかもしれない。
だけど故人を生者と錯覚させるような
演出はどうなのだろうと思う。
かつて紅白歌合戦に故人となった
美空ひばりを登場させてみたり、
松田優作が「上向きなよ」って
テレビの中に突然現れたり。
なにも死者は生者の興味を引き出すために
“存在する”わけじゃないような気がする。
AIは人間に安っぽい偽物の満足を
与えようとしているように見える。
それは冒涜であり驕りなのではないか。
商業ベースに乗せられた死者が可哀想だし
なんだか人間の根源的な領域にAIが
土足で踏み込んできたようで嫌悪を感じる。
作り手に死者を揺り起こす権利を与えたら
そのうちカルト教団の教祖が
現世に颯爽と登場するかもしれない。
死者は死者!参列者や視聴者の興味の対象と
なるべき存在ではないはずだ。