希望はどこかに。

戻ることのない舟が出る
 乗った覚えのない舟が出る
 港はどんどん遠ざかり
 星の見えない海の上
 舟を漕ぐあなたは誰?
 私はどこに向かってる?
 水平線の向こうが
 わずかに明るくなって
 弱った月のような太陽が昇る
 昼間になっても空は暗く
 凪いだ海は舟を揺らさない
 長く悲しく寂しい時間が流れ
 ときどき思い出したように
 間の抜けた風が吹く
 港はどこだ 私を帰せ
 私は絶望から逃れようと
 振り向き怒声を上げる
 その時になって私は気づくのだ
 この狂ったように広い海に
 私はたったひとりなのだと
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 年を取り力がなくなって
 いつしか周りに負担をかけている
 そんな自らの存在が許せず
 焦り苛立ち不安に襲われる
 介護するほうはそんな不安を
 少しでも和らげてあげられるような
 方策を模索してみるのだけれど
 徐々に意思の疎通ができなくなって
 途方に暮れそうになる
 それでも不安を感じさせないような
 介護のカタチを模索しなければ・・・
 希望を作ることと安心をあげること
 私の父と母はあの時
 どんな気持ちだったのだろう
 分からないまま私は今を生きている


