子どもに還った子どもたち。

「誰がいちばん先まで行けるか
 競走しようぜ」
 「やろうやろう!」
 「ぅわー!あの波、デカくね?」
 「おまえ、ビビってんの?」
 「だってオレ、短パン濡らしたくねぇもん」
 「じゃあお前は負けな」
 「や、や、やるよ。あっ、なんか踏んだ」
 「なに?」
 「わかんねえ。なんか固いもん」
 「オレはヌルッとしたもん。キモー!」
 「えーっ、そんなところまで行ったの?」
 「なにビビってんだよー!早く来いよ」
 「あの波ぜってぇやべえよ」
 「ジャンプすりゃいいじゃん」
子どもたちが浜辺で波と戯れている。
 ときどき大きな叫び声や笑い声が混じる。
 テニスウエアを着ているところをみると
 たぶんジュニアの選手たちだ。
 大きな大会の緊張感から解放されたのか
 みんなずいふん楽しそう。
 コートでは死力を尽くして戦っても、
 いや、戦った仲間同士だからこそ
 心置きなく楽しく遊べるのだろう。
 勝ち負けよりも大切な時間。
 ライバルたちが友だちに戻るひととき。
 みんな忘れられない思い出を作っている。
 ファインダーを覗きながら
 ぼくは素直に羨ましいと思った。


