夢の枕(3/6)
「心の内を自動で察知???
ぼくがどんな夢が見たいか分かるわけ?
このフワフワちゃんに」
「さいでございます」
「なんかすっごくイヤだな。
どうやって察知するの?」
「申し訳ございませんがそれは
企業秘密ということでご理解ください」
「ははーん、企業秘密ね。
だけどさぁ、何らかのカタチで
ぼくの心の内側に入ってきて
スキャニングみたいなことやるんでしょ?」
「それでは概要を申し上げましょう。
コバルト60を用いたガンマ線を
被験者の特定部位に照射することで
抽出した心理エネルギーを
モニター内にリアルタイムで映像化し
脳内に起こる精神作用を・・・・」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!
夢野さん、説明が難しすぎ!
今、コバルトがどうとか言ってたよね?
それって核爆発で有名な
あのコバルトのことでしょ。
それをどこに照射するっって?
なんかチョーアブナイ枕っぽいよ。
だいいちそんなもん商品として認可されたの?
それ、おかしいでしょ」
「いえ、まだ認可されるところまでは・・・
正直な話、今は臨床段階でして」
「えーっ!認可されていないものなのに
何でこのぼくが実験台になるわけ?」
「でもこれまでの臨床データからは
被験者が被曝したとか
精神障害を引き起こしたとかいう事例は
ほとんど報告されていません」
「ほとんど?なにそれ!ぼく、抜けます。
枕のモニタリングは別の人にお願いしてください。
とにかくぼくはやりませんから!」
「すみません。あなたさまを
怒らせてしまったとしたらとんだ失態、
いまのは冗談でございます。
ホントはそんな大仕掛けなプログラムは
この枕にはありません。
言ってみればただのイエス・ノー枕・・・
いや失礼、安眠枕でして、
このフワフワの中に頭を埋めて
スヤスヤお眠りいただきお好きな夢を
たんとお楽しみくださいというのが
この商品コンセプトなんです」
「なんだ、びっくりした!脅かさないでよー!。
ホントに入ってないのね?コバルト60」
「さいでございます。いかがです?
モニタリング、お引き受けいただけますか?」
「この枕で寝ればいいんでしょ?」
「おっと!大事なことをご説明するのを忘れていました」
「まだなにかあるの?」
「ここにモニタリング結果ご報告書があります。
どんな夢をご覧になられたのか、
そしてその夢はあなたさまが就寝前に
ご覧になりたい夢であったのかどうか
カンタンで結構ですのでお書きください」
「なんだそんなこと、了解!」
「それとモニタリング統計マトリックスに
あなたまさのデータを落とし込むために
お名刺を頂戴させていただけますか?」
「あー、いいですよ。はいどうぞ」
「ほー、広告デザインの会社を
やっていらっしゃる方。
まめのもりくうや(豆ノ森空也)さまと
お読みすればよろしいのでしょうか?」
「そう。ちょっと珍しい名前でしょ?」
「はい。一度聞いたら忘れそうにないお名前。
いい方に巡り会えた気がします。
商品特性の分析やマーケティングは
それこそお手のものでございましょう?」
「そんなことないですって」
「ご謙遜を!それではこれ、お持ちください」
「えっ!ぼく、これからクライアントと
打ち合わせで東京まで行かなくちゃならないから・・・」
「さいでございますか。
それでは私の方で、このいただいたお名刺の
住所宛に商品の枕をお届けしておきましょう」
※夢の枕(4/6)に続きます。