夢の枕(1/6)
もしも見たい夢が自由に見られる機械が
発明されたとしたら
あなたはどんな夢が見てみたいですか?
******************
「もし!そこの目がショボっとして
顔がボーッとしていらっしゃる方」
「えっ、それってひょっとしてぼくのこと?」
「さいでございます」
「ぼくはボーッとなんかしていないよ」
「これは、これは、これは。とんだ失礼を。
ん~、ではなんとお声かけを・・・」
「もういいです!用件はなんなんですか?」
「用件・・・」
「だってぼくに用があるから
呼び止めたんでしょ?」
「そうでした、そうでした!
つかぬことをおうかがいしますが、
あなたさまは、最近、夜、
ぐっすり寝られていらっしゃいますか?」
「寝られて・・・そんなこと、
どうして答えなくちゃいけないの?」
「いえね、じつは私こういう者で」
「快眠社 ピロー事業部 夢野荒野・・・
あなた、名刺で遊んでいるでしょ。
名刺の形も枕みたいだし」
「いえいえ、滅相もございません。
東証三部のきちんとした会社ですし、
私の名前も本名でございます」
「ふーん、それで?」
「実は弊社ではこの度、今までにない
画期的な枕の開発に成功!
ただいまモニタリング・キャンペーン中でして
ぜひともあなたさまにお試しを
お願いできないものかと、
お声をかけさせていただいた次第で」
「ヘ~、どんな枕なの?」
「単刀直入にズバッと申し上げます。
この枕に頭を乗せてお休みになられますと、
お望みの夢が見れるんです」
「ねぇその枕、どこから出したの?」
「私ども営業部隊は全員背中に背負ってるんです」
「背中に背負ってる?ヘンなの~。
あなたここまでその枕を背負って
電車に乗ってやって来たの?」
「さいでございます。
あなたさまにお会いするために」
※夢の枕(2/6)に続きます。