咄嗟の行動。

大地を鷲掴みするケヤキの根
 わずか3〜4mmの種から生まれた命は
 冬の寒さにも夏の暑さにも
 激しい嵐にも日照りにも耐えながら
 ゆっくりじっくり大きくなって
 こんなふうな逞しい根になったんだね
 見上げれば枝が空に向かって扇型に広がり
 低い雲ならくすぐれるくらい高く聳えていた
 私より歳上なんだろうか
 なんだか無性に抱きついてみたくなったので
 手を広げて幹に近づいていったら
 幹の向こうに犬を散歩させている女性がいて
 私の方を見ていることに気づいた
 私は慌ててストレッチをしているポーズに
 切り替えたけど女性の目は私に釘付け
 犬まで私を見ていた
 私は一時凌ぎのストレッチをやめ
 そのまま踵を返してその場を離れたけれど
 しばらく背中に女性と犬の視線を感じた
 だけど欅に抱きついてみたかったなぁ


