個人情報の夢。
新しいiPhoneがやって来たけど、
Wi-Fi環境下なら古いiPhoneも
フツーに使えるからなにかと便利だ。
ぼくはたった今見た夢の中で
事情はよく分からないけど
よっぽどお金に困っていたらしい。
お金を作ろうと意を決し質屋に飛び込んだ。
奥からペンギンに似たオヤジが出てくると、
ぼくを見て顔全体でニッコリ微笑んだ。
でも目だけは笑っていなかった。
まあいい。
「これ、お金に変えたいんだけど」
ぼくは無造作に古いiPhoneを
カウンターの上に乗せた。
ペンギンはそれをチラッと一瞥しただけで
ぼくの顔を取り調べでもするような
鋭い目でじっと見た。
ぼくはなんとなく気圧されて後ずさる。
すると急にペンギンの表情が
慈悲に満ちた微笑みに変わりこう言った。
「それでは早速拝見させていただきます」
ペンギンはルーペグラスを掛けると
不思議なことに暗証番号も聞かず
簡単にロックを解除しデータを調べ始めた。
入っている個人情報は消去したはずなのに
ペンギンはなぜか太い指で画面をタッチし
スクロールしながら笑ったり驚いたり。
「なにか消し忘れているのかなぁ」
「いえ。ご心配にはおよびません。
カンペキに大丈夫です」
ヘンな日本語。
それなのにどうしてペンギンは
笑ったり驚いたりしているのだろう。
やがてペンギンはルーペグラスを外し、
これでいかがでございましょうと言いながら
カウンターの上に5,000円札を1枚置いた。
まあそんなものかも知れない。
ぼくはペンギンが運転免許証をコピーしに
バックヤードに行っているあいだ
質流れした品物をなんとなく眺めていた。
そこにはぼくが質入れしたiPhoneと
同じ機種が並んでいる。16,500円。
ふーん。
と、その時その展示されているiPhoneの
画面が急に明るくなり、ぼくの個人情報が
映し出され始めた。
えっ、なんで?なんでなんで???
そこでぼくは半ばパニックになりながら
夢から目覚めた。
心臓がドキドキしている。
べつに知られて恥ずかしい情報なんて、
“こっそり変顔選手権“で撮った自分の
顔写真くらいしかないから
それほどドキドキすることもないのになぁ。
だけどぼくは古くなってもiPhoneは売らない。
「夢の中では売ったくせに!
しかも5,000円なんかで!この裏切り者!」
もうひとりのぼくが言う。
今朝は朝からぼくは針のむしろ。
なにも悪いことなんてしてないのに!
さっ、気分転換に今朝も走ってこよっと。