余裕。

なにかが足りない。
そこまで気づいていながら
それがなんなのか見つけることができない。

「・・・余裕・・じゃない?」
「えっ、余裕?」
「そうよ。足りてる?」
「あーっ!そう言われてみれば足りてないかも」
「でしょ」
「どうして分かったの?
キミはぼくじゃないのに」
「わたしがあなたじゃないから
分かることだってあると思わない?」
「たしかにそうかも知れない」
「自分のことは自分がいちばんよく知っている
・・・のだとしたら誰かに相談する必要なんてないもの。
自分のことが見えなくなることって誰にもあることよ。
それは恥ずかしいことじゃないわ」
「ぼくは恵まれているね。
こうして相談できる友だちがいるもの」
「わたしに感謝したくなった?」
「うん。感謝ついでにもうひとつ聞きたい」
「なあに?」
「どうすれば余裕って作れる?」
「んー、そうね。仕事のことでも、
プライベートのことでもそうだけど、
いったんそこから離れてみるってことも、
時には必要かも知れないわね」
「離れてみる・・・?わっ!どっ、どうしたの?
こんなに顔を近づけちゃって」
「どう?」
「どうって・・・もう少しで鼻と鼻がくっついちゃう」
「そんなことじゃなくてわたしがどう見える?」
「とてもイカしてるけどこれじゃぼんやりとしか見えない」
「でしょ。なんだって近づき過ぎるとぼんやりしてくるわ。
よく見えなくなると正しい判断ができない。違う?」
「ぼくはいま、悩みに対して近づき過ぎてるってこと?」
「少なくてもわたしにはそう見える。
あなた、根が真面目だものね?」
「ぼくが真面目・・・うれしい」
「(笑)わたし、褒めてない。
真面目であることは悪いことじゃないわ。
だけど真面目過ぎはダメ」
「ぼく、真面目過ぎ?」
「あぶないところに立ってる(笑)」
「どうしよう」
「ほらほら、それがよくないわ。
“どうしよう”って言いながら
どうしたらいいかをちゃんと考えてない。
それは見えなくなっているからよ」
「ねぇ、今夜、まだ時間、大丈夫?」
「ウチは門限がとっても厳しいけど、なに?」
「これからボウリングに行かない?」
「いいわねぇ!それ。賛成よ」
「スカッとするかな」
「気分転換には最高だと思うわ」
「なんかワクワクしてきたね」
「ワクワクだけど、負けないわよ」
「勝負、勝負!ワッハッハ!」
「なに、その笑い方、思いっきりオヤジ入ってる」
「ショボン」
「でも余裕は出てきたみたいね」
「キミのおかげさ」
「まあ、うれしい」

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