フジコが開けてくれた窓から-その1

どうやらベートーヴェンの3楽章からなる”月光”は
少しも月光をイメージしてなんか作られていなかった、
というのが真実のところらしい。
自らが付けた題名は”幻想曲風ソナタ”。
それは彼の死後、詩人のル−トヴィヒ・レルシュタープが
第1楽章を「月光に照らされてルツェルン湖面の波間に
揺れる小舟のよう」と表現したことに由来するのだとか。
ベートーヴェンは30歳の時、自らのピアノの弟子となった
14歳年下のジュリエッタ・グイチャルディに恋をした。
でも身分の違いから結婚には至らなかった。
その彼女に捧げるために作られた曲は”ロンド ト長調作品51-2”だった。
でもこの曲はリヒノフスキー伯爵令嬢へ贈られることが決まり、
その代わりに捧げられたのがこの”幻想曲風ソナタ”
ということらしいです。

まだいろいろなピアニストの演奏を
聴き比べたわけではないから、
いや、聴き比べてもその違いが分かるほど
耳も感性も肥えているわけではないから、
通り一遍のことしか書けないのだけれど、
有名な第1楽章はそう言われてみれば
心理学的な刷り込み効果もあって
月光が湖の湖面を静かに照らしているよう。
でも第2楽章、第3楽章と進むにしたがって
徐々にテンポが速くなっていったり、
両端の楽章に挟まれて異彩を放っている
第2楽章あたりでは月の光どころか
太陽が降り注いでいる花畑を蝶が舞っていても
おかしくないほどの明るさを感じる。
第3楽章に至っては傘をさしていても
それを突き破って降ってきそうな
激しい月光に感じられました。
いやいや、降ってくるのは月の光ではなく、
ベートヴェンの次第に高鳴る鼓動なのでしょう。

ちなみにグイチャルディに捧げられるはずだった
”ロンド ト長調 作品51-2”は恋の真っ只中って
言えるほど曲調が明るく朗らかに感じました。

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