カバンの中に。

「ねぇ、ジュリア」
「なに?」
「ぼくたちは永遠を探しながら
生きているよね?」
「まあ!もちろんそうよ。
きっといつか見つかるって信じてるわ。
ロバートと一緒ならね」
「ぼくもそう思うよ。
だけどぼくたちの命は
少しずつ
すり減っていって、
いつかはなくなってしまう。
ぼくはジュリアのことが大好きだけど
そういう気持ちとか思い出とかって
ぼくの身体の機能が停止したら
全部なくなっちゃうのかな」
「すごくむつかしいわね。
だけど気持ちとか思い出とかって
楽しいものや美しいものばかりじゃないわよね?
辛い気持ちや悲しい記憶が肉体がなくなってまで
永遠に残るとしたらちょっと困る。
永遠の中に持っていきたいものだけ
カバンに詰めることができるのなら
ぜったい持っていきたいけど
そう上手くはいかない気もするわね」
「ぼくも同じ考えだよ。
だからといって永遠の愛が
存在しないとは言えないよね?
憎しみとか悲しみの気持ちって
けっこうしぶとそうだけど
誰かを愛した時点で消えてしまう。
そんなふうに思ってる。
そう考えるとカバンの中に
愛する気持ちだけこっそり詰めて
永遠の中に入っていけそうな気がするよ」
「なんて素敵な考えなのかしら。
じゃあ命がなくなる前に愛を
いっぱい探しておかなくちゃ。
だけどなんで愛はこっそりなの?」
「愛をカバンに詰めているところを
憎しみや悲しみの感情たちに
見つかったら面倒だからだよ。
ぼくはジュリアをまるごと
カバンに詰めて永遠の中に入っていきたい」
「まぁ、ロバート!
わたしはロバートに誘拐されるのね?
素敵!カバンはゆとりのある大きさの
ものにしてね?キツキツはイヤよ」
「はははっ!ジュリアらしい。
大好きだよ、ジュリア!」
「わたしもよ!」
「ジュリアの胸に耳を乗せていい?」
「えぇ、いいわよ・・・
ロバートは鼓動が好きなのよね?」
「うん。ジュリアの心臓の音は
心の叫び声だからさ」
「心の叫び声?なにそれ。
わたし、なんて叫んでるの?」
「ロバート、大好き、ロバート、命、
ロバート、大好き、ロバート、命」
「あーっ!じゃあロバートのも聞かせて」
「あぁ、かまわないよ・・・
ぼくはなんて叫んでる?」
「ジュリアに、スイーツ、プレゼント、
ジュリアに、スイーツ、プレゼント」
「ぼくの心臓は三拍子かい!」
「そうよ。ロバートの心臓は正直ね」
「じゃあ、これから食べに行く?」
「賛成〜!スイーツの中に永遠、
見つけられるかしら」
「そうだね。一緒に見つけよう」
「食べ終わったら、もう一回
ロバートの心臓の音、聞かせて?」
「・・ジュリア、次は何が欲しいんだい?」
「ロバート、先回りの質問はダメよ」

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