オトナの世界。
アワアワで、シュワシュワで、ニガニガ。
子どもの頃、ビールとはそんな印象だった。
どうしてあんなヘンテコリンなものを
大人たちは喜んで飲むんだろうって。
もしかしたらカッコつけているだけで
本当はニガニガを我慢しているに違いない。
だってビールが喉を通るたびに
力いっぱい不味そうなするからさ。
あれ、ぜったい我慢している顔だもの。
だけどそんなヘンな飲み物なのに
あの白くてふんわり美味しそうな
アワアワだけはミョーに魅力的で
親にねだって舐めさせてもらっていた。
でも当然のことながらアワアワの中には
意地悪な人が仕組んだイタズラみたいに
ニガニガ成分がしっかり含まれていて
いつもオエーッ!となってしまうのだった。
とってもヘンだけどなんだか
惹きつけられてしまうフシギな飲み物。
こんな飲み物を大人になった私が
好きになるとはビールに負けず劣らず
私もヘンなイキモノなのかも知れない。
と、ここまではビールの話だけど
こういうビールみたいな人って
けっこういるような気がする。
ニガニガを隠したアワアワのような人。
アワアワのなくなったニガニガのような人。
ニガニガとアワアワが絶妙な感じの人。
時間が経っても必死でアワアワを
キープしようとする人(笑)。
でも共通しているのはアワアワの中には
必ずニガニガがあるってこと。
考えようによってはアワアワは罠だけど、
騙されることを承知で丸ごと付き合って
みるのも刺激的なことかも知れない。
ニガニガも味わい深いものがありそうだし。
私はいくつになっても
ふっくらしたシャンプーのような
アワアワを頭の上に乗せていたい。
誰かを騙したいとかそういうんじゃなくね。
そんなことを考えながら
今夜は缶からタンブラーにビールを注いで
子どもたちにアワアワを見せびらかしながら
目をつむって眉毛をハの字に上げるのだ。