まもなく苦手な季節。
秋の風がかたまりの雲を砕いてゆく
しばらくすれば巻積雲ができ上がる
そんな感じの空模様
公園の銀杏はもう落ち尽くしてしまった
まもなく葉は黄色に変わって
美しい黄金色の絨毯が敷かれる
「じきに陽だまりが恋しくなるね。
寒いのは苦手かい?フレディ」
「あっしは毛皮を着ているので大丈夫っす」
「雪が降っても?」
「雪ってあっしにとっちゃ遊び道具です」
「じゃあ雪が積もったら雪合戦しようか」
「あっしには手がないから雪玉を投げることも
作ることもできません。
追いかけっこのほうがいいでやんす」
「キミは走るのが早いから
ご主人様には捕まえられないよ」
「捕まらない程度にゆっくり走ってあげます」
「・・・フレデイ、話題を変えよう。
寒くなったら家で焼き芋をやろうよ。
アルミホイルに紅はるかを包んで
170℃で80分焼けば蜜が滴るような
美味しい焼き芋ができるらしいよ」
「10回に1回くらいは
わざと捕まってあげてもいいです」
「焼き上がったら熱々のうちに
バターを乗せていただけばメチャウマだよ」
「最初に鬼になってあげてもいいです」
「暖かい部屋から雪を見ながら
焼き芋を頬張れば身体が芯から温まるし」
「右前足は使わないで走ってあげてもいいです」
「・・・フレディ、そんなに雪が好きなんだ」
「はい!」
「ご主人様をいじめて楽しい?」
「いじめるだなんて人聞きの悪いこと
言わないでください。追いかけっこは
身体が温まる遊びでやんす」
「たぶんご主人様は急激に温まりそうだけど
キミは全然温まらないと思うよ。
温まらないどころかどんどん冷えていって
冷凍犬になるかもよ」
「レイトウケン?」
「そう。カチコチに凍っちゃうってこと。
そしたら電子レンジのザックリ解凍モードで
戻してあげるけどそれでいい?」
「よくありません!だいいちぼくは
大き過ぎて電子レンジには入りませんよ」
「じゃあカチコチのままでいいの?」
「ご心配なく。凍る前に家に帰って
ご主人様のベッドでゆっくり温まりますから」