かわいいギターマン。
「ちょいとそこ行く犬連れの御仁!」
「えっ、ぼくのこと?」
「そうだよ。オイラの歌を聴いていかない?」
「ほぅ、キミ、けっこうかわいいじゃん。
どんな歌を聞かせてくれるんだい?」
「聴いてみたい?」
「うん、だけど見ての通りいま散歩中だし、
だいいちフレディがおとなしく
聴いてなんかいられないと思うんだ」
「その犬、フレディっていうの?」
「そう。あっ、フレディ、
そんなにグイグイ引っ張るなって!
ほらね、こんな状態だもの
またの機会に聴かせてもらうよ」
「仕方がないな。なら、これ」
「なに?」
「前売券」
「あっ、ゴメン、
いつ聴きに来れるか分からないから」
「じゃあ、またの機会って言ったのは
ただの社交辞令だったってわけ?」
「そ、そんなつもりで言ったわけじゃ・・・」
「よし、じゃあこうしよう。
お試しってことでオイラがいま、
曲のサワリだけ歌ってみるからさ
それで聴きたくなったらオイラが
被っているソンブレロハットの上に
500円玉を乗せる。
残念だけどまた今度ねって思ったら
前売券を買って今日のところは帰る」
「えっ、どっちにしたって聴くことに
なるのかぁ。うん、分った。いいよ」
「じゃあ今から歌うからね」
(ポボボボボ ボボボボ・・・)
🎵よこはまにある ゆうえんちの
コスモパニックのひじょうぐちが🎵
「おや?“炎と森のカーニバル”じゃん!
うまっ!フレディも驚いてるよ」
「はい、ここまで~!さあ御仁、どうする?」
「ご主人様、あっし、続けて聴いてみたいです」
「じゃあ500円玉ハットの上に乗せるから
ちゃんと一緒に聴いて楽しもうね?」
「毎度あり~!」
それからこのパンプキンのギターマンは
“炎と森のカーニバル”を飛び跳ねながら
楽しそうに熱唱し、ぼくとフレディも
路上で飛び跳ねて踊ったのでした。
演奏の途中、チャリーンと何かが落ちる音が
したのですが、あまりにも楽しかったから
誰も気づきませんでした。
でも大丈夫!
コウモリくんがどこからか飛んで来て
落ちた500円硬貨を拾い上げて
ギターマンのハットの中に戻してあげたのです。
・・・ってなことを考えながら
今朝の散歩を終えました。