いつか、ね。
ぼくは空の写真をよく撮る。
空を見上げて、ああなんかすごくいいって
思ったらもうスマホカメラを立ち上げてる。
本当は空の写真を撮っているのではなく
自分が空の向こう側にあるなにかを
撮りたがっているのかも知れない。
空はどんなふうに撮っても
空以外のものではないはずなのに
不思議といつもそう思ってしまう。
ぼくは海の写真もよく撮るし、
植物の花や葉っぱの写真もよく撮る。
できることなら月の写真も撮りたい。
だけどぼくのスマホじゃ月はうまく撮れない。
月は写真に撮るよりもゆっくり眺めながら
想像力を膨らませるほうが楽しい気がする。
美しいなぁと感じたら月に向かって
シャッターを切ることもあるけれど
たいていはその写りにがっかりして
迷った挙句、結局は捨ててしまう。
空も海も植物も月も
実物のほうがずっといいに決まってる。
それは知ってる。
だけどなにかを感じるとやっぱり反射的に
シャッターを切ってしまうのだ。
美しいと感じる気持ちを残したくなるのかな。
不思議だなと思う空気や雰囲気を
閉じ込めたくなるのだろうか。
いつかあの広さを感じられるような
空の写真が撮れるだろうか。
いつかあの浜辺の潮騒が聞こえてくるような
海の写真が撮れるだろうか。
いつかあの芳しい匂いが漂ってくるような
美しい花の写真が撮れるだろうか。
いつかあの静寂の中に浮かび上がる
幻想的な月の写真が撮れるだろうか。
感じたものを捕まえて閉じ込めるような
写真が撮れたらいいなって思う。
※写真は少し前の秋の空。
うまく撮れたなっていうよりも
空のほうが撮ってごらんよって
誘っているような感じだった。
ぼくはただその音のない声に従って
シャッターを切っただけ。
被写体のほうから誘ってくる時、
いつも気に入った写真が撮れる。