いい夢を見た。

夢の中で御殿場の女占い師が
焼きトウモロコシを齧りながら
しばらくぼくを見た後でこう言った。

“解決策を知ってるわ”

・・・いったいぼくは
どんな問題を抱えているのだろう。
御殿場の女占い師の次の言葉を待ったけど
彼女はそう言ったきり大きな目で
ぼくをジロジロ見ながら無言で
焼きトウモロコシを食べ続けた。
ぼくは辛抱強く食べ終えるのを待って
解決策ってなんのことか聞いてみた。
すると彼女はタオルで汚れた手を拭いたあと
ミツバチの貯金箱をワンピースの中から
取り出しぼくの前に突き出した。
コインのほかに紙幣の投入口まである。
その中にお金を入れろということらしい。
あいにく持ち合わせがないと言うと
彼女は何かを考えるような表情を浮かべ
すぐに手を打ち貯金箱をしまいながら
笑顔を作ってこう言った。
「PayPayでもかまわないわ」
「いくら支払えばいい？」
「税込みで3300円」
御殿場の女占い師は消費税も取るらしい。
まあいい。
ぼくがなんらかの問題を抱えていて、
それが解決に向かうなら安いものだ。
ぼくが支払い操作を済ませると
彼女の目はさらに大きくなり
こぼれるような笑顔でサンキューと言った。
彼女のその笑顔を見て無垢な声を聞くと
ぼくはなんだかいいことをした気分になり
解決策を聞くことなんて忘れてしまった。
「いいシューズね」
彼女はぼくの足元に目を落として言った。
「去年アウトレットで買ったっものだよ。
今日初めて履いたけどなかなかいい感じ」
「とても似合っているわ」
それから彼女はスマホで時間を確かめ
「もう行かなきゃ。またどこかで会いましょ」
彼女は可憐なターンでぼくに背中を向け
軽やかに歩きながら去っていった。
不思議なことに彼女は幸せそうに
右手で5キロの米を抱えていた。