願い。

「ねぇアルタイルさん、あたしたち、
年に一度しか逢えないのに
どうしてその日に限って地球人から
ジロジロ見られちゃうのかしら」
「そうだよね。確かにベガの言う通り、
ぼくたち注目されているみたいだけど、
ぼくたちチョー有名だし、てか、
生まれながらにスターだから
しかたないかも知れないよ?」
「あたしはイヤ!誰にも干渉されずに
あなたとこっそり逢瀬したいの。
せっかくロマンチックな夜なのに
なんだかとってもシラケちゃうわ」
「そんなこと言ってもさぁ」
「なんだなんだご両人、オイラがいること、
お忘れじゃありませんかって」
「あっ、カササギさん。あなたにお願いしたら
なんとかなりそうかしら?」
「まかせておくんなせぃ。
オイラがちょいと細工して差し上げましょう」
「細工ってカササギ君、もしかしたら
地球をドッカンでもするつもりか?」
「まさか、アルタイルさん。
いやね、細工って簡単なことでございます。
77日にちょいと地球に雲をかけてあげりゃ、
おふたりさん、思う存分逢瀬を楽しめる。
違いますか?」
「まぁ、なんて素敵なアイデアですこと。
さっそくお願いしたいわ」
「だけどさぁ、地球人だってまんざら
悪気があってぼくたちを眺めてるわけでも
ないんじゃないかって思うんだ。
ほら、仙台とか、平塚とか、あの祭りって
ぼくとベガのために作られた祭りでしょ?」
「あのぉ、もしもーし!オイラの名前が
抜けちゃってますよアルタイルさん!」
「あっ、そうだったそうだった。
君がぼくとベガの間を取り持って
くれてるんだったよね?」
「そうよ、アル!カササギさんに対して失礼よ」
「ベガさん、なんとありがたいお言葉。
おやさしいあなたらしい」
「じゃあ今からお願い!」
「えっ、今からってまだ6月ですよ?」
「かまわないわ。思い切りやって!」

そんなわけで日本には梅雨があるらしい。
たとえ七夕が曇りだろうと雨だろうと、
ぼくたちは願を短冊に託す。
今年の願いはみんな同じかも知れない。
一致団結でもするような強力な願い。
かなう日がはやくやってきますように。

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