新しい物語。

ジブンよ、翼はあるか?

「ないよ。オレ、人間だもの」
「いやいや、そういう意味じゃなくてさ。
分かるでしょ?説明しなくたって」
「それって生物学的な質問じゃなくて
文学的アプローチをしたってわけ?」
「そうだよ。どう?」
「・・・あった」
「あった?今はないの?」
「まだあるにはあるけど羽ばたいては
落ちるを何度も繰り返してきたから
ある時を境に羽ばたきたいって気持ちが
すっかりなくなっちゃった」
「もったいない!人はみな繰り返すものさ。
落ちればそのうち羽ばたくのが嫌になる。
だけど降りることができたらどうだろ」
「落ちるんじゃなくて降りる?
それも文学的アプローチ?」
「そう、捉え方の問題だよ」
「ソフトランディングってわけかぁ。
上手に降りることができたら
また翼を広げるのも怖くなさそうだね」
「やってごらんよ。見ててあげ・・・
そうそう、ぅお〜、迫力あるじゃん」
「キミに見えるの?ぼくの翼」
「あぁ見えるとも。相変わらずちょっと
ヘンなカタチだけどなかなかイケてるよ。
さっ、飛んでごらんよ」

”まだ6月だというのに梅雨前線は完全に消滅し、
雲ひとつない空の真ん中で
獰猛な太陽が外にあるあらゆるものを
焼き尽くすかのように容赦なく照らしていた。
ときおり吹く熱風のような海風は波濤を砕き
そのまま不快な潮風となって
昼下がりの鄙びた漁港に運ばれてくる。
ケンジはスケッチブックを抱えて
顔を顰め吹き出す汗を拭いながらバスを降り、
堤防へと続く小道を歩いていた・・・”

「そうそう、その調子ならどこまでも
飛んで行けそうじゃん」
「そうかな」
「そうさ!」

そんなわけでジブンに促され
眠れない夜中の時間を利用しながら
1年半ぶりに物語を書き始めました。
今回は絵を習い始めた初老の男性と
天文学に夢中の中学生男子の
交流から生まれる生きがいみたいなものを
描いてみようと思っています。

※今朝の散歩で見つけた樹。
複雑な素性を持つ物質の分子構造みたい。
宇宙の大規模構造のようにも見える。
小さな葉はその中で蠢くオタマジャクシのよう。
たいていの植物は光合成をするために
上へ上へと枝を伸ばすのだけれど、
この植物はよく観察すると内側下方も含め
縦横無尽に枝を広げるため
密度が濃く全体的に丸い形を保ちながら
大きくなっていくようです。
ツゲの仲間のボックスウッド・・・かな?

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