会いたかった思い出。

一瞬、あれっと思ったんだ。
いきなりあんな強烈な合図を
されたことって今までに
なかったもんだからさ。
ガツンときたよ、ガツンと。
まぁ、気まぐれなあいつらしいと言えば
あいつらしいんだけど・・・
秋波を送るってのはまさに
このことじゃないかって感じたんだ。
いやそれでね、オレはすぐに行動に移したさ。
このチャンスを逃す手はないよなって。
思わず色めきたっちまったよ。
長い間恋焦がれていたあいつが
その気になってオレに合図を送ってきたのなら
よーしオレだってちゃんと
応えなくちゃって思ったんだ。
あいつをグイグイ引き寄せたよ、
無我夢中でね。
あいつをこの手で抱きしめなくちゃって。
なかなかやるだろ?オレ。男だし。
ところがだ。
だいぶふたりの距離が縮まったと思ったら
あいつ急にそっぽを向いて
オレから離れて行こうとするんだ。
まいったねぇ。気まぐれにもほどがあるよ。
まるであんたなんかにカンタンに
引っかかるような私じゃないわって
言わんばかりの態度なのさ。
だけど先にモーションを
仕掛けてきたのはあいつの方だぜ。
ずいぶんだろ?ずいぶんな話さ。
オレもいよいよ男をあげられるかもって
思った矢先のことなのに、
あの態度はないよな?絶対ないよ。
あいつに逃げられたら
もうオレは男としておしまいさ。
そう思ったから必死に引き留めたよ。
引きつった顔もおかまいなしに
全神経を集中させてさ。
するってーとあいつの動きが
ピタリと止まったんだ。
そこでオレはここぞとばかりに
力まかせにグイッとやったら
プツンとなにかが切れるような
イヤ〜な音がしたのさ。
縁が切れる音ってぇものがあるなら
あの音がまさにそれじゃないかって思ったさ。
そりゃあないよ。
抱きしめることが叶わなければ
せめて間近であいつの顔を見たかったよ。
オレは堤防に立ってしばらく呆然としていた。
そして海に向かって固く誓った。
今度はお前をこの手で抱きしめるって。
待ってろ、クロダイ。

※河口堰に立って釣りに凝ってた
会社員時代に思いを馳せた後
クルマに戻ろうとして足元を見たら
カタバミの花たちが日向ぼっこをしていました。
そして私を見て「ドンマイ!」だって(笑)。

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