ゴンドラ。

「ねぇロバート、見て、お月様」
「あっ、ホントだ!満月なのかな?
いい感じに輝いているね」
「えぇ、とってもロマンチック。
もっと近くで眺めてみたいものだわ」
「じゃあ今から京急デパートの
屋上にでも行ってみようか?」
「ロバート、そんなんじゃなくて
もっと・・なんて言えばいいかなぁ、
そう、特別な気持ちで
眺められる場所が欲しいの」
「空飛ぶゴンドラみたいな?」
「それ名案!作って」
「えっ?」
「ロバートならきっとできる」
「ジュリア、いくらなんでも・・・
って思うでしょ?ほーら」
「キャー、なにこれ!すごいわ。
あたしのために作ってくれたの?」
「そうだよ。どぉ、気に入った?」
「もちろんよ。これが空飛ぶゴンドラなのね。
色もマホガニー系であたし好み!乗ってみていい?」
「うん。バランスを崩すと危ないから
ぼくがゴンドラを支えててあげるよ」
「まあ!なんてステキな乗り心地!あっ、これはなに?」
「アコーディオン。開けてごらんよ」
「ホントだぁ!ステキよ。
ロバート、バッチリね。さぁ行きましょ」
「えっ、行きましょって、どこへ?」
「夜空に決まっているじゃない」
「それはムリ!翼もエンジンもまだ付けてないもの」
「えーっ、なにそれ!あんなにお月様がきれいなのに
近づくことができないなんて・・・」
「ジュリア、きみの横に座ってみてもいい?」
「いいけどまだ飛べないんでしょ?
わたしたち。あっ、気をつけてグラグラしているわ」
「ヨイショ」
「ぅわ〜、ロバート!
いまふたり一緒にゴンドラの中ね?」
「ジュリア、目を閉じてみて?」
「どうしたの?」
「いいから!」
「これでいい?」
「うん。ジュリア、なにが見える?」
「えっ、いまあたし、目、閉じてる」
「わかってる。目を閉じると
見えてくるものって、ない?」
「・・・ロバート・・・あなたが見えるわ。
ゴンドラの後ろに立って
アコーディオンを弾きながら
一所懸命にオールを漕いでいる。
よく見るとたまにスクワットも
器用に織り交ぜていて
ロバートがしゃがむたびに
ゴンドラが大きく揺れる」
「それって、ぼく、忙し過ぎだよ」
「ひとつロバートに質問していい?」
「なに?」
「このシチュエーションで
スクワットって、どんな意味が?」
「ゴンドラの後ろに立って
アコーディオンを弾きながら一所懸命にオールを漕いで
なおかつジュリアを抱き上げる力をつけるためだよ」

 月夜の海に
二人の乗ったゴンドラが
波も立てずにすべってゆきます 
あなたの人生にもムダな想像力を!
(本文の内容と今夜の月は合っていません)

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