たしかに感じる。

秋を連れてくる静かな雨
 一面絹鼠色に塗られた空
 それが太陽の場所を隠していて
 時が流れていないように感じる
 あの灼熱の激しい季節は
 終わったのだろうか
 太い樹の幹に染み付くような
 蝉たちの鳴き声はどこへ消えた?
 しっとりと濡れた静寂の海
 そこに小石を投げ入れるように
 どこか遠くの方で風鈴が何度か鳴った
 私の耳は
 その微かに聞こえる夏の音を拾い上げ
 押し花のように残夏の記憶として
 そっと閉じ込める
天気がいい日は、
 まだまだ真夏のようですが
 確実に季節が変わろうとしていますね。
 それは陽が落ちた夜の風の中に
 顕著に感じます。
 身勝手な私はあれほど秋の到来を
 待ち望んでいたのに
 いざその秋がやって来ると
 ジリジリ照りつける獰猛な夏の陽が
 ひどく懐かしく思ったりします。
 毎年そうなんです。
 心地いい秋風に吹かれながら
 夏のあのあらゆるものを
 溶かして飲み込んでしまうような
 激しさをどこかに探してしまうんです。


